フリーランスをやめてチームに戻った理由。孤独より設計が学べる場所を選んだ
フリーランスをやめた理由を一言で言うと、「設計を誰かに教えてもらえる環境に入りたかった」からだ。
孤独がつらかったとか、収入が不安定だったとかではなく、純粋に「このままでは技術的に詰まる」という感覚が先にあった。2022年秋から2年間フリーランスをやって、2024年秋にフィンテック企業に転向した。振り返ると、その判断は正しかったと思っている。
フリーランスを始めた理由
新卒でブロックチェーンゲームの会社に入って、半年でフリーランスになった。理由はシンプルで、責任に報酬が見合っていなかったから。小さなスタートアップで、入社してすぐにサーバーのリードを任される場面があった。責任は重かったけど、給与はスタートアップの水準のまま。フリーランスで動けば報酬は上がると判断した。
実際、収入はある程度上がった。Web3だけじゃなくAIも触れるようになって、技術の幅も広がった。フリーランスにした判断自体は間違いじゃなかったと思う。
徐々に感じてきたこと
自分の成長を自分だけで判断し続けることに、1年半で限界を感じた。
コードレビューがない。設計の正解が分からないまま進む。誰かに「それ違う」と言ってもらえる環境がない。最初はそれが自由に見えていた。でも時間が経つにつれて、自分が成長しているかどうかを判断できるのが自分だけ、という状況がじわじわときつくなっていった。
フリーランスで出したAIアプリは2本ともほぼユーザーが来なかった。宣伝をほぼしなかったのでそれは当然だったんだけど、「完成した」という達成感より「誰も使っていない」という現実の方が長く残った。技術は積み上がっているはずなのに、それが誰かの役に立てているかが見えない。その感覚がフリーランス後期のモチベーションを静かに削っていった。
チームに戻ると決めた
転向を決めた理由は、「設計を学べる場所に入りたい」という一点だった。
フリーランス後期に『エンジニアリング組織論への招待』(広木大地)を読んで、なぜ一人でいると詰まるのかを言語化するヒントをもらった。技術的な問題には「不確実性を下げるプロセス」が必要で、一人で設計していると不確実性を自分だけで抱えることになる、という話が出てくる。チームで設計するのはその不確実性を分散させるためだ、という視点が、当時の自分にすっと入ってきた。
フィンテックを選んだのは、金融系のシステムは設計の複雑度が高いと聞いていたから。マイクロサービス、APIゲートウェイ、厳しいセキュリティ要件——モノリスしか経験していない自分には、それだけで学べることが多いと判断した。
「チームに戻る」ことへの抵抗はあまりなかった。当時の自分にとって、コードレビューをしてもらえること自体がかなり魅力的だった。フリーランスでは、自分の書いたコードが正しいかどうかを誰にも確認してもらえなかった。それが思った以上にストレスだったと、戻ってから気づいた。
実際に転向してみて
フィンテックに入って最初の数ヶ月は、マイクロサービスの全体把握に苦労した。サービス間の通信、分散トレーシング——モノリスの文脈では出てこない概念が一気に押し寄せて、コードを書く前に「全体がどう動いているか」を理解するだけで消耗した。
ただ、それは「知らないことが分かった」という状態だった。フリーランス後期の「自分が成長しているかどうか分からない」とは、感覚がまったく違う。詰まることは怖くないけど、何が分からないかが分からない状態は怖い。
上位エンジニアの設計力と判断の速さには今でも毎日圧倒される。「分かってきた」と思ったら新しい知らないことが出てくる。それが今はしんどいより面白い。フリーランス後期の感覚とは、根本的に何かが違う。
フリーランスが合う人とチームが合う人は、たぶん違う。どちらが優れているかという話ではなく、自分が今何を必要としているかによる。
僕の場合は「設計を誰かに評価してもらえる環境」が必要なタイミングで、フリーランスではそれが得られなかった。それだけの話だ。逆に言うと、フリーランスで得た「一人で設計する経験」があったから、チームの設計議論についていけている部分もある。どちらの経験も、今のところ無駄になっていない。