転職後の試用期間がしんどい。慣れないのは当たり前、という話


転職後の試用期間がしんどいのは、当たり前だと思っている。

「向いていないのかもしれない」「思っていたのと違った」「もう辞めたいけど、さすがに早すぎるか」——相談で聞くたびに、あの頃の自分を思い出す。コンサルからキャリアコンサルタントに転身したときの最初の1年。試用期間という言葉は使わないけど、感覚はたぶんあれに近かった。


試用期間がしんどい理由は、だいたい同じ

試用期間のしんどさは、だいたい3つの理由に集約される。

まず「分からないことが多すぎて疲れる」。仕事の内容だけじゃなく、社内のコミュニケーションの作法、誰に何を聞けばいいか、どこまで自分で判断していいか。これが全部同時にのしかかってくる。

次に「評価されているか分からない怖さ」。前職では自分の立ち位置がある程度見えていたのに、新しい環境では何もかもリセットされる。上司が何を考えているか読めない。「ちゃんとできているのか」という不安が、常に背景で動いている。

最後に「前の職場との比較」。転職したのに「前の方がよかったかも」という感覚が出てくる。これが出てきたとき、多くの人は「転職を後悔している」と思い込む。でも実際には、ただ慣れていないだけのことが多い。

しんどさのピークは3ヶ月前後

試用期間のしんどさは、入社後2〜3ヶ月目にピークが来る。

最初の1ヶ月は緊張が防波堤になっている。「まだ新人だから」という猶予も本人の中にある。でも2ヶ月目に入ると、その緊張が解けてきて、かわりにじわじわとした疲弊が出てくる。「いつまでこの感じが続くんだろう」という気持ちが生まれる。

実はこのタイミングが、一番「合っていない」と感じやすい時期でもある。でも、しんどいピークと「本当に合っていない」は別の話だ。4〜5ヶ月目になると、多くの人は少し景色が変わると言う。慣れというより、土台ができてくる感覚だ。

相談で見えてくること

試用期間のしんどさを抱えて相談に来る人が、実は多い。

「入社して3ヶ月で辞めたいと思うのは早すぎますか」という問いで来る人が、毎月のように来る。話を聞いてみると、仕事内容に問題がある人は少なくて、人間関係の読み方がまだ分からない、というケースが多い。誰に相談すればいいか、どこまで自分で動いていいか。そういうことが見えていないから、ずっと神経が張り続けている状態になっている。

先月相談に来た25歳の女性は、転職して2ヶ月目に「この職場、もう無理かもしれない」と連絡してきた。話を聞いたら、業務自体は問題ない。ただ、隣の席の先輩がとにかく無口で、「自分は嫌われているんじゃないか」と毎日不安になっていると言った。確認してみたら、その先輩は誰にも話しかけない性格だったらしく、3ヶ月後には「あの人、めちゃくちゃ仕事教えてくれるんです」と報告が来た。

慣れる前に「合わない」と判断してしまうと、そういう景色を見る前に動いてしまう。

試用期間を「観察の期間」として使う

しんどいときほど、視野が狭くなる。

試用期間中は、自分が評価されているかばかりが気になりがちだ。でも実は、自分が職場を観察する側にいることを忘れないでほしい。どんな人が評価されているか、どういう仕事の仕方が通じるか、誰が話しかけやすいか——そういうことを少しずつ集めていく時間でもある。

評価される側であることと、観察する側であることは、両立できる。むしろ慣れていない時期の方が、職場の構造が「外から見た目」で見える。慣れてしまうと当たり前になってしまうことが、まだ見える時期でもある。

試用期間が終わる頃、「あ、あそこはそういう仕組みになっていたのか」と分かることがある。それが分かると、少し余裕が出てくる。その余裕が出てから判断しても、遅くはない。

ルーティンを一つだけ作る

しんどい時期に支えになるのは、毎日小さく続けられることだと僕は思っている。

試用期間中、夜に帰ってから5分だけ「今日分かったことを一つ書く」習慣をつけた人がいた。「今日、部長への報告は数字から始めた方が受け取りやすいと分かった」とか、そういう些細なことでいい。それを続けていると、自分が少しずつ職場の言語を覚えていることが見えてくる。成長が見えない時期の、小さなよりどころになる。

習慣化って、しんどさを消すためというより、しんどさの中で自分を保つためにある気がしている。完全に回復するまで待たなくていい。今日一日だけ続けられることを一つ持っておく。それだけで、翌朝の出発が少し変わってくる。

「試用期間をどう過ごすか」は、意外と転職後の評価にも影響する。慣れない時期でも「話しかける」「聞く」「小さいことを積み上げる」を続けている人と、ぼーっと待っている人では、同じ3ヶ月でも見え方が違う。完璧にやらなくていい。ただ、何もしない日よりも、一つだけ動いた日を増やしていく。それが試用期間の使い方だと思っている。しんどいのは当たり前で、その中で少しずつ動けることが大事だ。

独立1年目、収入がゼロの月があった

キャリアコンサルタントとして動き始めたとき、収入はゼロの月もあった。

前職の年収が900万円台だったのに、コンビニのレジで少し迷う生活になった。それだけじゃなくて、「自分はこの仕事に向いているのか」という問いが毎週のように頭に出てきた。ひとりで帰る電車の中で「本当にこれでよかったのか」をぐるぐると考えた時期がある。

あのとき辞めなかったのは、相談を受けた人が少しだけ前に進んだ瞬間を見たいという気持ちが、しんどさより少しだけ上回っていたからだと思う。照れくさいけど、それが本当のことだし、今もそれは変わっていない。

「続けるか辞めるか」を試用期間中に決めなくていい

試用期間は「自分が合っているかを確かめる期間」ではなく、「慣れる期間」と思った方がいい。

向き不向きは、慣れた後に判断できることが多い。慣れる前に「合わない」と感じるのは自然なことで、それだけで判断するには早い。

今いる場所でまず動くしかない時期がある。試用期間はそういう時間だと思う。完璧な状態になってから本気を出そうとすると、いつまでも本気を出せない。今あるものでやってみる。その先で見えてくるものがある。

試用期間を終えた人が言うこと

試用期間を乗り越えた人に「振り返ってどうでしたか」と聞くと、だいたい同じことを言う。

「あの3ヶ月がしんどかったけど、抜けてからが面白くなった」。あるいは「もう少し早く慣れようとしなければよかった、と思う」。どちらも、「試用期間がしんどかった」という事実は同じで、そこからどう過ごしたかが違う。

しんどさを「合わないサイン」と読んで早々に動いてしまった人は、「慣れる前に辞めてしまった」という後悔を持つことがある。一方で、しんどさを「慣れていないサイン」と読んで続けた人は、ある地点から景色が変わることを経験している。

どちらが正解かは、個々の状況による。でも少なくとも「試用期間中のしんどさだけで判断する」のは早い。


試用期間がしんどいのは、転職を失敗したサインじゃないと思う。むしろ、ちゃんと新しい環境に向き合っている証拠だとも言える。あの頃の自分に会えるなら、そう言ってやりたい。

相談に来る人の多くは、しんどさを一人で抱えている。同期には言えない、上司には弱みを見せたくない、という状態で、頭の中だけでぐるぐると考えている。

誰かに話すだけで、少し楽になることがある。「転職して試用期間がしんどい」というのは、口に出してみると意外とシンプルな悩みだったりする。一人で解決しようとしすぎず、まず誰かに話してみてほしい。

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Syun

早稲田大学ラグビー部出身。大手外資系コンサルを経て、32歳でフリーランスのキャリアコンサルタントとして独立。サウナとルーティンをこよなく愛する。

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