「いい会社なのに辞めたい」相談に共通していたこと
「いい会社なのに辞めたい」という相談は、思っているより多い。
給料も悪くない、人間関係も特別ひどくない、倒産のリスクもない。それなのに「なんか違う」「このままでいいのか」という感覚が消えない。そういう状態で来る人が、月に何人かいる。
この相談が難しいのは、問題が見えにくいことだ。明確なハラスメントがあるわけでも、業績が傾いているわけでもない。「何が嫌なのか」を自分でも言語化できないまま来る人が多い。
相談を重ねて見えてきたパターン
「いい会社なのに辞めたい」という悩みの原因は、だいたい4つのどれかに落ち着く。
① 仕事内容と自分の強みがズレている
会社の評価は悪くないのに、満足感がない。これは「できることをやっている」状態で「やりたいことをやっている」状態じゃないことが多い。得意だから任されているが、それ自体に手応えを感じていない。
28歳の商社勤務のBさんがそうだった。「数字を作るのは得意だし評価もされている。でも何かが空っぽな感じがする」と言った。話を聞いていくと、数字を作ることより、お客さんの課題に向き合う時間の方が圧倒的に生き生きしていた。強みと喜びがズレていた。
② 成長の実感がなくなっている
入社2〜3年目以降に多い。最初は覚えることだらけだったのが、だんだんルーティンになって、「このまま何年もここにいたら自分はどうなるんだろう」という不安に変わる。
これは会社が悪いのではなく、フェーズが変わったサインだと僕は伝えている。不満ではなく、成長欲求が仕事を上回り始めている状態だ。辞めることで解消する場合もあるし、社内で動き方を変えることで解消する場合もある。
③ 周囲との比較で生まれた違和感
転職した友人、起業した知人、SNSで見かける同世代の話。相対的に「自分は何をやっているんだろう」という感覚になる。
ただ、これを原因として転職に動くと、たいてい後悔する。比較は動機になるが、根拠にはならない。「なぜ自分が今いる環境に物足りなさを感じているのか」を別の角度から掘り起こす必要がある。
④ 将来像が描けなくなっている
「5年後の先輩を見て、あそこには行きたくないと思った」という話はよく出てくる。キャリアのロールモデルが見えなくなると、今の仕事にも意味を見出しにくくなる。
相談で最初に聞くこと
「いい会社なのに辞めたい」と言う人に対して、最初に聞くことがある。
「今の仕事で、最後に手応えを感じたのはいつですか」
この問いへの答えが遠ければ遠いほど、現状の乖離が大きいことが多い。逆に、最近の出来事がすぐ出てくる場合は、辞めたい気持ちの原因が仕事の中身ではなく、別の何か(上司・人間関係・待遇)にある可能性が高い。
原因が違えば、打ち手も変わる。転職が答えの場合もあれば、異動・副業・社内での動き方の変更が答えの場合もある。
「いい会社」という言葉のトラップ
「いい会社」という言葉自体が、悩みを長引かせていることがある。
「いい会社にいるのに辞めたいなんておかしい」「贅沢だ」という声は、周囲からも、自分の内側からも来る。その声が、悩みを口にすることへのブレーキになる。
でも、会社がいいかどうかと、自分に合っているかどうかは別の話だ。客観的にいい会社であることは、その人にとってその仕事が正しい選択であることを保証しない。
「いい会社なのに」という言葉が出たとき、僕はそこに引っかかるようにしている。その「いい会社」という評価は、誰の基準で言っているのか。親か、同期か、社会的な評価か。自分はその基準で本当に満足しているのか。
そこを丁寧にほぐすと、悩みの輪郭が少しずつ見えてくることが多い。
「なんか違う」という感覚は、言語化できないから曖昧なままになりやすい。でもその感覚には、たいてい理由がある。その理由を一緒に探すことが、相談の最初の仕事だと思っている。