転職を迷い続ける人が陥る思考のクセと、抜け出すための一つの問い


キャリア相談をしていると、転職を迷っている人から同じような言葉を聞くことが多い。

「今の会社を辞めていいのか、分からなくて。」

ある人は1年以上その不安を抱えたまま、ただ毎日を消化していた。別の人は「辞めたい」と思いながら、辞めることへの怖さで動けずにいた。迷いは本物なのに、どこに向かえばいいのか分からない状態だ。

これ自体は当然の迷いだと思う。でも話を聞いていくと、多くの人が同じ場所でつまずいている。

「辞めていいか」を考えている限り、答えは出ない

「今の会社を辞めることが正しいかどうか」は、答えが出ない問いだ。

転職を迷うとき、多くの人はこれを考え続ける。

辞めることが「正しいか正しくないか」は、辞めた後にしか分からない。辞める前に正解を探そうとするから、堂々巡りになる。1年悩んでも2年悩んでも、この問いへの答えは出てこない。

相談に来る人の話を聞いていて、ここに気づいてもらうことが一番大事だと思っている。正直、1回目の面談で本音が出ることはほぼない。「年収を上げたい」「環境を変えたい」という言葉の下に、本当の引っかかりが隠れていることが多い。3回目くらいにようやく「実は…」が出てくる。

問いを変えると、見えるものが変わる

「辞めていいか」を「自分は何のために働くのか」に変えると、視界が変わる。

抽象的に聞こえるかもしれないけど、これは意外と具体的な話だ。

たとえば、「誰かの顔が見える仕事がしたい」という答えが出れば、今の職場でそれができるかを考えればいい。できないなら、それが転職の理由になる。「成長できる環境が欲しい」なら、今の環境で本当に成長できていないのかを確かめればいい。

「辞めていいか」ではなく「何が欲しいか」が分かると、転職すべきかどうかより、どこに行けばいいかが見えてくる。

もう少し踏み込むと、「何が欲しいか」が明確になると、今の職場でそれが手に入る可能性も改めて考えられるようになる。そこで「やっぱり無理だ」と思えれば、転職の理由がぼんやりした不満ではなく、自分なりの根拠になる。それだけで、転職先に対して問いかけられることが増える。面接で「なぜ弊社ですか」と聞かれたとき、答えられる人と答えられない人の差は、大体この段階で生まれている気がする。

8ヶ月目に、問いを変えた

コンサルを辞めるとき、僕も同じ場所でつまずいていた。

「辞めていいのか」をずっと考えていた。高収入を手放していいのか、せっかく入ったのに辞めていいのか。この問いを、たぶん8ヶ月くらい引きずっていた。

その間も仕事はこなしていた。クライアントの評価もよかった。でも帰りの電車の中で、ぼんやり「自分、何してるんだろう」ってなる時間が増えていた。別に不幸じゃない。不幸じゃないのに、なんか違う。その「なんか違う」を説明できなくて、「辞めていいか」を考え続けることで誤魔化していた気がする。

転換点は、問いを変えたことだった。

「辞めていいか」じゃなくて、「何があれば、今日終わったあとにちゃんと満足できるか」を考えた。風呂に浸かりながらぼーっとしていたとき、ふと。

答えは出た。「誰かの人生の転機に、直接関われること」。コンサルでそれができるかを、正直に考えたら、難しかった。それが分かったら、もう決断するだけだった。

迷っていた8ヶ月が嘘みたいに、最後は3日で決めた。

「正しい転職」はない

最後に一つだけ。

転職に「正解」はないと思っている。辞めて良かったと思う人もいれば、残ればよかったと思う人もいる。でもそれは、どちらの選択が正しかったかではなく、その後に何をしたかによる部分が大きい。

転職先で腐れば後悔になるし、残った会社で本気でやれば正解になる。

「辞めるべきかどうか」より「その先で自分がどう動くか」の方が、キャリアを決める。僕はそう思っている。

相談に来る人が時々「決断できない自分が情けない」と言う。でも、迷っているのは真剣に考えているということだから、それ自体はむしろ良いことだと思っている。迷いが長引くのは、問いが間違っているだけで、意志が弱いからじゃない。

問いさえ変われば、あとは意外と早い。


今日も誰かの「どうすればいいか分からない」に付き合いながら、この仕事を続けている。答えを出すのはいつも本人で、僕にできるのは問いを変える手伝いをするだけ。それが、思っていたより好きな仕事だった。

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Syun

早稲田大学ラグビー部出身。大手外資系コンサルを経て、32歳でフリーランスのキャリアコンサルタントとして独立。サウナとルーティンをこよなく愛する。

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