人事異動で辞めたくなった。転職すべきか、踏みとどまるべきか


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人事異動の発令が出て、辞めたくなった。不安と焦りが入り混じったまま、毎年3〜4月にかけて相談が一気に増える。

「行きたくない部署に飛ばされた」「上司が変わって全部嫌になった」「これを機に転職を考えている」——内容はいろいろだけど、底に共通してあるのは「このタイミングで動いていいのか」という迷いだ。

人事異動の発令が来たとき、「なぜこの自分が」という感情は自然だと思う。

キャリアの方向性を自分で描いていた分、それが崩された感覚がある。特に専門性を積んでいたポジションから、全然違う部署に飛ばされたとき。せっかく関係を作ってきたチームから切り離されたとき。その喪失感は本物で、転職したくなるのは無理もない。

ただ、感情が高いタイミングで判断すると、判断の質が下がる。感情をそのまま動力にすることと、感情を整理してから判断することは、全然違う結果につながりやすい。

異動で辞めたくなる理由は、だいたい2種類ある

相談を聞いていると、「異動がきっかけで辞めたくなった」理由はほぼ2パターンに分かれる。

一つは、異動先の仕事内容・環境が合わないケース。やりたくない業務への配置換え、慣れない職種、関係性を作り直すコスト。これは「異動先」への不満であって、会社そのものへの不満ではないことが多い。

もう一つは、異動をきっかけに「この会社でいいのか」が浮上したケース。異動という外部の出来事が、ずっと蓋をしていた本音を引き出す形になる。この場合、問題は異動先ではなく、もっと根っこにある。

どちらかによって、「転職すべきか」の答えはかなり変わる。

「異動先が嫌」なのか「会社自体が嫌」なのか

シンプルに問い直してみると整理しやすい。

異動がなければ今の会社を辞めたいと思っていたか。「そこまでは思ってなかった」なら、問題は異動先にある。「正直ずっとモヤモヤしてた」なら、会社との相性の問題に近い。

前者であれば、まず異動後の環境を一定期間試すことに意味がある。後者であれば、異動はあくまで「動くきっかけ」であって、転職を検討すること自体は自然な流れだと思う。

「異動先でまた繰り返すか」を一回考えてみる

転職する場合でも、「異動への不満」のまま動くのはリスクがある。

相談でよく見るパターンとして、異動で嫌になって転職したものの、次の会社でも配置換えがあって同じ気持ちになる——というケースがある。異動自体がストレスになっている場合、どこに行っても起きうる問題だ。

「異動がない会社」「自分でキャリアを決められる環境」を軸に転職先を選ぶなら、それは有効な基準になる。でも「今の異動先が嫌だから早く脱出したい」という動機のまま動くと、同じことを繰り返す可能性がある。

動機の整理だけはしておいた方がいい。そこだけは急がなくていい。

3月発令後の1ヶ月で起きること

毎年、3月末から4月初めにかけて、相談が一気に増える。

発令が出た直後は、感情がかなり動いている。「こんな部署に行きたくない」という怒り、「なんで自分が」という不満、「もうここにいたくない」という気持ちが混ざっている。この状態で転職活動を始める人が多い。

でも実際に話を聞いていると、1ヶ月後に状況が変わることが多い。新しい部署に行って「意外と悪くないかもしれない」と思い始める人がいる。逆に、最初は「慣れるかも」と思っていたのに、1ヶ月で「やっぱり無理だ」と確信に変わる人もいる。

どちらにせよ、発令直後の感情が高ぶっているタイミングより、少し時間をおいた方が判断の質が上がる。感情の温度が高いうちに動き出すと、次の転職先を選ぶ軸が「今の嫌な環境から逃げること」だけになりやすい。それで選んだ転職先が合うかは、運に左右される部分が大きくなる。

ただ、「1ヶ月待て」というのは「何もするな」ということじゃない。その間に転職エージェントに話を聞きに行くのは有効だ。「動く前の情報収集」として動けば、感情が落ち着いたタイミングで判断の材料が揃っている状態になる。

転職を決めていい条件は、わりとシンプル

異動がきっかけであっても、転職を決めていい条件はそれほど複雑じゃないと思っている。

一つは、異動先で改善できる余地がほぼないと確認できたとき。相談・交渉・一定期間の適応を試みた上でそれでも変わらないなら、動くことに意味がある。

もう一つは、異動を機に「本当にやりたいこと」が言語化できたとき。漠然と嫌だという感情だけで動くより、「次はこういう環境に行きたい」という軸が出てきてから動く方が、転職の精度が上がる。

3月の発令直後に感情が高ぶっているタイミングで決断するより、ひと月くらい置いてから考えた方がいい判断ができることが多い。焦って動く必要はない。


「異動後1ヶ月」は何のために使うか

転職活動と異動後の適応を同時に進めることは、思った以上に消耗する。

どちらも中途半端になるリスクがある。選考と異動先での立ち上がりが重なると、どちらにも集中できなくなる。「異動先に慣れる時間」と「転職活動に使う時間」は別々に確保できた方がいい。

実際的な話をすると、異動後の1〜2ヶ月は「異動先での状況確認」に使って、その間にエージェントへの登録や情報収集だけ進めておくのが現実的だ。選考を動かすのは、異動先の状況が見えてからでも遅くない。

「今すぐ動かないと機会が逃げる」と感じる気持ちは分かる。でも転職市場は、1〜2ヶ月で劇的に変わることはない。焦らず情報を集めて、判断の材料が揃ってから動く方が、長い目で見て精度が上がる。

「人事異動で辞めたい」という気持ちは、弱さじゃない。それは「自分に合った場所で働きたい」という当たり前の感覚だと思う。

ただ、異動の発令直後は感情が動きやすい時期でもある。何が嫌で、どこに行きたくて、何を試したか——その順番で整理してから動いても、転職の機会は逃げない。

異動をきっかけに相談に来た人の中で、最終的に転職した人も、転職しなかった人も両方いる。どちらが多いとは言えないけど、整理してから動いた人の方が、転職した後の満足度が高い印象がある。「異動が嫌で逃げた転職」と「次にやりたいことが見えての転職」は、同じ転職でも全然違うものになる。

異動という出来事は変えられない。でも、そこからどう動くかは自分で決められる。それだけは覚えておいてほしい。

人事異動で転職を考え始めた人が「感情が落ち着いてから動こう」と待ちすぎることもある。逆に、感情が高いまま動きすぎることもある。どちらもバランスが難しい。

ある程度落ち着いてから判断するということと、焦らず情報収集を始めることは、並行してできる。情報を持った状態で判断する方が、後悔しにくい。「何が嫌で、どこに行きたいか」が少しでも言葉になったとき、次の一歩が見えてくる。その言葉を作る時間が、異動後の1ヶ月に持てると、その先の動き方が変わる。焦って動く必要はない。ただ、「何が嫌で何を望んでいるか」だけは少しずつ言葉にしていく。そこだけに時間を使えれば、次の選択が整ってくる。

「まず言語化する」というのは、どんな相談にも最初に勧めていることだ。感情の大きさはそのままでいい。「何が嫌なのか」「何を望んでいるのか」——この2つを言葉にできると、判断の精度が変わってくる。異動という出来事は変えられなくても、そこからの動き方は自分で決められる。転職本を何冊読むより、一回誰かに話す方が早いことも多い。それが僕の仕事の本質だと、いつも思っている。

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Syun

早稲田大学ラグビー部出身。大手外資系コンサルを経て、32歳でフリーランスのキャリアコンサルタントとして独立。サウナとルーティンをこよなく愛する。

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