転職してよかったと今でも思う理由。コンサルを辞めて5年が経った


転職してよかったのか、後悔していないか。そう聞かれたら、今でも迷わず「よかった」と答えられる。

5年が経った今もそう思っていることが、自分でも少し不思議だ。コンサルを辞めた直後は収入がゼロの月もあったし、「本当にこれでよかったのか」という不安で帰り道にぐるぐる考えた夜もある。それでも今、後悔していない。その理由を正直に書いてみる。

転職してよかったかどうかを判断するのは、転職後の時間でしかできない。転職前に確信を持つことはほぼ不可能で、動いた後に「よかった」と分かるものだと思っている。だから転職前に「後悔しないか」を考えすぎても、答えは出ない。それよりも「なぜ動くか」が明確な方が、転職後の「よかった」につながりやすい気がしている。


転職してよかったかどうかは、転職した直後にはまだ分からない。ある程度の時間を経て、振り返ったときに初めて言えることだと思っている。だから転職した直後に「これでよかったのか」という問いを持ち続けるのは、少し早い。

5年経って「よかった」と言えるのは、この5年間に積み上げたものがあるからだ。転職した直後の不安や収入の減少より、5年後に手元に何が残っているかの方が大事だと今は思っている。

「感謝される仕事」に就けた

一番大きい変化は、感謝される場所に立てたことだ。

コンサルにいたころはそれがなかった。「誰かの役に立てたか」という実感が持てないまま週が過ぎていった。資料を作って提言をまとめて納品する。成果は出ていた。でも、誰かが「ありがとう」と言ってくれる距離にいなかった。週末に一人で仕事のことを振り返るたびに、何も手元に残っていなかった。

今は、相談に来た人が話しながら少しずつ表情が変わっていくのが分かる。「なんかすっきりしました」「次の面談で話してみます」。そういう言葉が、仕事を続けるエネルギーになっている。コンサル時代に感じられなかったものが、ここにある。お金では買えないと分かった上で、それでも大事にしたかったのはこれだった。

「誰と働くか」を自分で選べるようになった

フリーランスになってから、誰と仕事をするかを自分で決められるようになった。これが想像以上に大きかった。

コンサル時代はプロジェクトのアサインが基本で、「このクライアントが合わない」と感じても替えることはできなかった。今は、関わり方を自分で設計できる。大人数の場より一対一の相談に集中できる働き方を選んだのも、自分で決めた結果だ。

収入が高い仕事を断ったことも、何度かある。でも「合わない環境に無理して入る」より、自分が機能する場所で働く方が長続きする。今はそれがはっきり分かる。コンサル時代は「断る」という選択肢が自分の中になかった気がしてる。照れくさいけど、それは怖さからだったんだと思う。

「年収を失う怖さ」から自由になった

転職してから、年収は一度大きく下がった。今はある程度戻っているけど、一番よかったと思っているのは「年収を失う怖さから自由になれた」ことかもしれない。

年収が高い状態にいると、「それを失ったらどうなるか」という恐怖で動けなくなる。コンサルを辞めるのに8ヶ月かかったのは、その恐怖が大きかったからだ。実際に収入が下がってみると、人間の適応力が思ったより高いことが分かった。生活は組み直せる。收入よりも、毎日の仕事に意味を感じているかどうかの方が、長い目で見てずっと効いてくる。これは経験してみないと分からなかったことだ。

「誰と働くか」の解像度が上がった

転職後に変わったことで、もう一つ思っているのが「人の見え方が変わった」ことだ。

コンサル時代、プロジェクトのメンバーはアサインで決まっていた。「この人と組む」という選択の余地がほぼなかった。仕事が速い人も、遅い人も、「このチームでどうやっていくか」しか考えられなかった。

フリーランスになってから、仕事を一緒にするかどうかを自分で選べるようになった。最初のうちは「断るのが怖い」という感覚が強かった。仕事が来ていることへの安心感を手放したくない、という気持ちがあった。

でも少しずつ「自分が機能しやすい関係性」というものが分かってきた。一対一で話せる相手、対話を大切にする姿勢、「答えを押しつけない」というスタンス——これらが揃っている仕事関係の方が、自分はよく動ける。コンサル時代には、そういう感覚を持てる余地がなかった。

転職してよかった理由の一つは、「自分が何を大切にしているか」が見えてきたことかもしれない。

転職してよかった理由って、結局何か

「転職してよかった」と思えているのは、転職先が良かったからじゃない。「自分に合った場所に向かって動いた」という事実が大きい。振り返ってみると、そこに行き着く。

転職を迷っていたあのころ、一番しんどかったのは「動けない自分」だった。合わないと感じながらも動けなくて、8ヶ月が過ぎた。その停滞の感覚は、転職後のしんどさより正直キツかった。

動いた後には、良いことも悪いこともあった。でもどちらも「経験した現実」で、頭の中だけで膨らむ不安より、ずっと手触りがあった。


「転職してよかったか」という問いに対して、5年経っても「よかった」と言えているのは、転職先が完璧だったからじゃないと思う。合わないと感じた場所から、合うかもしれない場所に向かって動いた、その選択を後悔していないからだ。転職そのものが正解だったというより、「動くことを選んだ自分」を肯定できているということかもしれない。

相談に来る人の多くが「転職して後悔しないか不安だ」と言う。その気持ちはよく分かる。でも今の僕が言えるのは、後悔したとしてもそれは「動いた後の経験」であって、動かずに止まり続けることとは全然違う、ということだ。動いた後の後悔には、次の選択肢がある。

5年経って、コンサルを辞めたことを後悔していないのは、転職先が完璧だったからじゃない。「誰かのキャリアの転機に関わりたい」という軸が、今の仕事と一致しているからだ。その軸が崩れなければ、多少のしんどさには耐えられる。転職してよかったかどうかは、その軸を持って転職できたかどうかで決まる気がしている。今もそう思っている。

転職を迷っている人がいたら、「転職してよかったかどうか」を今決める必要はない、とだけ言いたい。動いた後に見えるものがある。動いてからしか分からないことがある。そういうものだと思っている。ただ、「なぜ動くか」は動く前に少しでも言語化しておいた方がいい。そこだけは、5年経っても変わらずそう思っている。

5年間で変わったことと変わっていないことがある。変わったのは収入と働き方と、毎日の仕事の手触りだ。変わっていないのは、「誰かのキャリアの転機に関わりたい」という感覚だ。その感覚が変わっていないということが、転職してよかったと言える一番の理由かもしれない。転職先が良かったのか、自分が選んだ仕事が良かったのか——それは分けて考えた方がいいと思っている。後悔のない転職の核心は、仕事への感覚の方にある気がしている。「この仕事をやっていてよかった」と思える感覚を持てているかどうか——それが転職の正解を決める。その感覚を持てる場所に向かったこと。それが5年後の「転職してよかった」につながっている。5年前の自分への最大の贈り物は、あの決断だったと思っている。

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Syun

早稲田大学ラグビー部出身。大手外資系コンサルを経て、32歳でフリーランスのキャリアコンサルタントとして独立。サウナとルーティンをこよなく愛する。

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