20代のキャリアで後悔しないために。外資コンサル→独立した32歳の振り返り
32歳になって、転職相談の仕事をしていると、20代の人から「20代のうちにやっておくべきことは何ですか」と聞かれることがある。
毎回少し考えてしまう。正解が分からないから。
20代の僕が考えていたこと
外資系コンサルに入った20代前半の僕は、正直キャリアをあまり深く考えていなかった。
「いい会社に入れた」「給料が高い」「同期が優秀」。それだけで十分だと思っていた。早稲田でラグビーをやっていたころと同じで、目の前のことに全力を出していれば、なんとかなると思っていた。
なんとかはなった。でも「なんとかなること」と「やりたいことをやること」は違うと気づいたのが、27歳のときだった。
後悔しているか、というと
していない。でも、もう少し早く気づけたとは思っている。
コンサルでの3年間は無駄じゃなかった。あの経験があるから、今キャリア相談の仕事で説得力が出る。高収入の世界を知っているから、それを手放すことの意味が分かる。遠回りに見えた道が、今の仕事の根っこになっている。
ただ、「何のために働くか」という問いに正面から向き合ったのが遅かった。20代の前半から考えていたら、もっと早く自分に合った場所に辿り着けたかもしれない。
コンサル時代、26歳ごろの話をもう少しすると——周囲の同期が次々と転職したり昇進したりする中で、自分だけ立ち止まっているような焦りがあった。表面上は評価されていたのに、なぜか不安が消えなかった。今思えば、評価と充足感は別物だと頭では分かっていても、体が追いついていなかった。その「なんか違う」の感覚を、長い間ちゃんと聞いてあげられなかったことが、唯一悔やまれることかもしれない。
20代に一つだけ言えるとしたら
「好き嫌い」を大事にしてほしい。論理じゃなくて、感情の話だ。「この仕事、なんか好きだな」「この瞬間、なんか嫌だな」という感覚を、忙しさの中で流さないでほしい。
キャリアの決断は最終的に論理でするものだけど、その手前の「自分が何に向いているか」は、感情の積み重ねからしか見えてこない。
週1回、夜に一人で近所を歩く時間を、ずっと続けている。その時間だけは仕事のことを考えていい時間と決めていて、「今週、達成感あったか?」と自分に聞くようにしていた。
あるとき、答えが出なかった。プロジェクトは動いていた。評価もされていた。でも誰かの人生が少し良くなった感覚が、全然なかった。夜道を歩きながら「このまま5年後も同じことを繰り返しているんだろうか」と思ったとき、じわっと何かが変わった気がした。
それが転換点だった。感情を流さずに聞き続けたから、気づけたことだったと思う。
感情を聞く習慣は、劇的な気づきを一発で与えてくれるわけじゃない。むしろじわじわと積み重なって、ある日突然「あ、やっぱりそうか」となる。その習慣が効いたのは、何かを考えるための場所というより、感情を遮断しない時間だったからかもしれない。仕事も人間関係もスマホも、すべてオフになる。そこで浮かんでくるものだけが、自分の本音に近い気がしている。
転職相談に来る人を見ていると、「感情より論理で考えなきゃ」という人ほど、迷いが長引く印象がある。損得やリスクを計算しても、最後の一歩が踏み出せない。論理が足りないんじゃなくて、感情の声を聞けていないだけ、というケースが多い。
自分が嬉しかった瞬間、悔しかった瞬間、誰かに感謝されてちゃんと嬉しかった瞬間——そういうものを、メモでも日記でも何でもいいから、残しておいてほしい。後で振り返ったとき、自分のパターンが見えてくる。
「20代のうちにやっておくべきことは?」という問いに、今の僕なら「自分の感情をちゃんと聞くこと」と答えると思う。かっこ悪い答えだけど、これが一番正直なところです。