転職してからミスマッチに気づいた。そのとき何を考えるべきか
転職してからミスマッチに気づいた、というのは、想像以上に悩むことだと思う。
「仕事の内容が思っていたのと違う」「職場の雰囲気が合わない」「この会社、自分には向いていないかもしれない」。転職して数ヶ月で、こういう感覚になる人は少なくない。せっかく決断したのに、という焦りと、どうすればいいか分からない不安が重なって、一人で抱えてしまうことが多い。
正直に言うと、僕自身もコンサル時代の後半、そういう感覚を持ち続けていた。向いていない、というよりも「なんか違う」という感覚が8ヶ月ほど消えなかった。
転職後にミスマッチを感じる人が少なくないことは、相談を受けていて実感している。入社前に完全に情報を集めることはできないし、実際に入ってみて初めて分かることがある。それは転職の「失敗」じゃなくて、「転職のプロセス」の一部だと思っている。
どの会社に入っても、最初の数ヶ月は「なんか違う感」が出てくることがある。違和感がない方が珍しい。問題は「違和感があること」じゃなく、「その違和感がどの種類か」を分けずに判断しようとすることだ。
ミスマッチには種類がある
ミスマッチの種類によって、対処はまったく変わる。
よく見るパターンとして、3ヶ月目に「もう無理かも」という感覚でやってくる人がいる。でも話してみると、「仕事内容が合わない」という問題じゃなく「職場での自分の位置が見えない」という問題だったりする。誰に聞けばいいか、どのくらいやれば評価されるか、何を期待されているか。それが見えない不安が「ミスマッチ」という言葉になっていることがある。
種類を分けて考えることで、「慣れれば解消するものか」「時間が経っても変わらないものか」が見えやすくなる。その判断ができると、「続けるか辞めるか」より先に「まず何をするか」が見えてくることが多い。
仕事内容のミスマッチは、「聞いていた業務と実際が違う」という状況。これは入社前の情報と現実のズレで、比較的明確に判断できる。
環境・文化のミスマッチは、仕事内容は悪くないのに職場の雰囲気や価値観が合わないケース。数字より関係性を大切にしたいのに、とにかく数字で評価される文化、といった感じ。これは中長期のしんどさにつながりやすい。
タイミングのミスマッチは、仕事そのものが悪いわけじゃないけど、自分の今の状態と合っていない。転職直後の慣れていない状態で判断すると、これを「会社への不満」と勘違いしやすい。
どの種類のミスマッチかによって、対処が変わってくる。
「すぐ辞める」はどう判断するか
入社3ヶ月以内の「辞めたい」は、一旦立ち止まることを勧めている。
これは「絶対続けろ」ということではない。ただ、3ヶ月以内のタイミングは「慣れていない状態」と「ミスマッチ」が混在していることが多くて、判断がブレやすい。
僕が聞くのは「半年後も同じことを感じていると思うか」という問いだ。慣れの問題なら時間で変わる。でも文化や価値観のズレは、時間が経っても変わらないことが多い。
もう一つ聞くのが「今の不満を言語化できるか」だ。「なんか違う」だけでは、もう少し具体化が必要になる。「何が違うのか」が言えるようになると、辞めるべきかどうかの判断がしやすくなる。
ミスマッチを感じた時期の、具体的な話
相談に来た31歳男性の話が記憶に残っている。
転職して5ヶ月目に来た。前職は中堅の製造業、転職先はIT系のスタートアップ。「仕事のスピードが全然違う。ついていけているのか分からない」と言った。見ていると、スキルの問題じゃなく、「前職での正確さが大事」という仕事観と「スタートアップでのスピードが大事」という仕事観がぶつかっていた。
この場合、どっちが正しいわけじゃない。ただ、「自分はこういう仕事の仕方が性に合っている」という認識が転職前になかったから、転職後に「合わない」の正体が分からずに消耗していた。
話しながら、本人から「自分はやっぱり丁寧に積み上げる仕事の方が好きなんだと思う」という言葉が出た。それが出てからは、「このスタートアップで慣れていくか、次を探すか」という選択肢がはっきりした。言語化される前は、「向いていないのかも」という曖昧な不安しかなかった。
続けると決めたなら、どう過ごすか
ミスマッチを感じながら続けるのは消耗する。だからこそ、「何のために続けているか」を自分なりに持っていた方がいい。
「スキルを積むための2年間」「転職の経歴として完結させる」「今いる環境で一つだけ結果を出す」。何でもいい。根拠のある理由が一つあると、消耗の仕方が変わる。
相談者から聞いた言葉で印象に残っているのがある。「最初は合わないと思っていたけど、辞めなかったのはここで認められたかったから。それだけだった」。その人は結局2年後に自分のペースで次の転職をした。ミスマッチを感じながらも自分の軸で動いていた、という感じがして、なんかよかったと思った。
ミスマッチは転職の失敗じゃない
転職してミスマッチに気づくことは、転職の失敗じゃない。入ってみないと分からないことは、必ずある。
大事なのは「気づいた後にどう動くか」だと思っている。感じたことを放置して消耗し続けるより、一度立ち止まって言語化して、判断する。それだけで、だいぶ違う。
「転職に後悔している」と相談に来た人が、話しているうちに「思ったより整理できていた」と気づくことが多い。頭の中にあるものを出してみると、意外と答えは自分の中にある。転職本を何冊読むより、一回誰かに話す方が早いことも多い。正直、それが僕の仕事の本質だと思っている。
ミスマッチを感じたとき、まず言語化してみてほしい。漠然と抱えたままにしておくより、言葉にするだけで次の選択がずっとしやすくなる。言葉にできた人の方が、次に動けるタイミングが早い。そこだけは、相談を重ねてきて確かだと思っている。
ミスマッチを感じたときの「時間の使い方」
ミスマッチを感じている期間を「ただ耐える時間」にしてしまうのは、一番もったいない使い方だと思っている。
感じているミスマッチが「慣れの問題」なのか「価値観の問題」なのかを少しずつ見極めながら、並行して「転職市場での自分の価値」を確認しておく。エージェントに登録して情報収集をするだけでも、「動ける状態にある」という安心感が生まれる。その安心感が、「もう少し今の会社で試してみようか」という判断を支えることもある。
逃げ場があることを知っている状態で続けるのと、逃げ場がないと感じながら続けるのでは、同じ「続ける」でも消耗の仕方が違う。
最後に少し個人的な話をすると、コンサルを辞めてキャリアコンサルタントに転身したあの最初の1年も、ある意味ミスマッチとの戦いだった。
相談するスキルはあっても、フリーランスとして仕事を作っていくスキルがなかった。営業もブランディングも全部一から。「キャリアコンサルタントの仕事が好き」と「フリーランスとして仕事が取れる」は全然別のことで、この2つが揃うまでに時間がかかった。
あのころ自分が何に困っていたかを思い返すと、今の相談で見ている「ミスマッチ」と重なる部分がある。好きな仕事と、うまくいく仕事が別だと分かるとき、人は揺れる。それが「向いていないのか」という問いになりやすい。でも実際は、好きな仕事でもうまくなるまでに時間がかかるというだけのことだ。そこを混同しない方がいい、と今は思っている。