年収1000万でも転職できない理由。高収入層が抱えるお金以外の悩み
年収1000万を超えているのに、転職できない。そういう相談が来る。
転職相談を重ねてきた経験から言うと、悩みの種類は年収帯によってはっきり変わる。年収400〜600万帯の人は「もっと稼ぎたい」「評価されたい」という話が多い。でも1000万を超えると、お金の話がほとんど出てこない。
「次も同じ年収じゃないと」という呪縛
今の年収を基準にすると、選択肢が極端に狭くなる。多くの人がここでつまずく。
今の年収を基準にしてしまうと、選択肢が極端に狭くなる。「1000万以上じゃないと転職できない」という前提で動くと、そもそも動ける場所がほとんどない。
でも話を聞いていると、本当にその年収が必要かというと、多くの場合そうでもない。生活費を計算すると700万でも十分だったりする。ただ「下がること」への心理的な抵抗が強い。
年収は一度上がると、それが「当たり前」になる。そこから下げることは、数字以上の喪失感を伴う。これは理屈じゃなくて感情の話なので、論理で解決しようとしても難しい。
1年を通じて勤務した給与所得者のうち、給与が1,000万円を超える人の割合は全体の約5.5%となっている。
年収1000万を超えているのは給与所得者全体の約5%台、20人に1人だ。それだけ希少なポジションにいながら、相談の中では「自分は普通の会社員」という感覚で話す人が多い。そのズレがある分、転職の選択肢が「当然1000万以上」という前提で知らぬ間に狭まっていく。
ステータスと仕事が分離できない
肩書や会社名が、いつの間にか自分のアイデンティティになっている。高収入層ほどこれが強い。
「〇〇社の部長」という役割が、自分のアイデンティティになってしまっている。転職してその肩書がなくなったとき、自分が何者か分からなくなる怖さがある。
これは高収入層に限った話じゃないけど、ポジションが上がるほど強くなる傾向がある。長年かけて積み上げてきたものほど、手放すのが怖くなる。
相談の中で「会社を離れた自分に、何が残りますか」と聞くことがある。これが答えられる人と答えられない人で、転職後のパターンがだいぶ変わる。(→ 高収入層の相談でよく見えてくること)
本当の悩みが出てくるのは、3回目以降
高収入層の本音は、相談の3回目以降に出てくる。最初の1〜2回は年収やポジションの話で終わることが多い。
高収入層の相談では、「実は今の仕事が好きじゃない」「何のためにここまで頑張ってきたのか分からなくなった」という本音が出てくるのは、3回目以降が多い。最初の1〜2回は「年収を維持したい」「ポジションが〜」という表層的な話になる。
先日も、大手メーカーの40代管理職の方と話していて。4回目のセッションで、「子どもが就職活動を始めて、何のために働くのかって聞かれたんですよ」と言い出した。そこから1時間、ずっと黙って話を聞いていた。彼が本当に迷っていたのは、転職するかどうかじゃなかった。
お金もポジションも手に入れたあとに残る問いが、一番核心に近い。それに早く気づいた人の方が、転職の結果が良いことが多い。
迷っているなら、一度「年収ゼロ」で考えてみる
実用的な話をすると、年収の制約を一度外して考えてみることをよく勧めている。
「お金が全部同じだったとして、どこで働きたいか」「何をやっていたいか」。
これは夢の話じゃなくて、自分の本音を探る作業です。年収という変数を消したときに何が残るかを見ると、本当に動きたい方向が見えやすくなる。
そこから現実の年収条件に戻っていくと、「これは譲れないが、これは妥協できる」という整理ができてくる。(→ 転職で年収が下がっても後悔しない人の考え方)
コンサルを辞めるとき、僕も怖かった
年収を下げる怖さは、1000万に届かなかった僕にもあった。(→ 転職に踏み切れない人に共通すること)コンサルを辞めた27歳のとき、年収は900万台でした。それでも、下げる怖さはあった。
転職活動をしながら、給与交渉のたびに「前職の年収」が基準になる感覚がある。「これより下は無理だ」という気持ちが、どこかに張りついていた。
「会社を離れた自分に何が残るか」——これ、僕も自分に問いかけてみたことがある。
正直、最初はうまく答えられなかった。「コンサルで身につけたスキル」とか「問題を整理する力」とか、そういう言葉は出てきた。でも、それが「自分らしいか」と聞かれると、なんか違う気がした。本当に残るものが見つかったのは、友人の転職相談を手伝ったときだった。あの感覚は、会社の外に持ち出せるものだと思えた。
年収1000万を超えてから転職に踏み切れない人と話すたびに思うのは、悩んでいる場所がお金じゃないということ。お金の話をしているときほど、本当の問いは別のところにある。